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大阪地方裁判所 平成2年(行ウ)14号 判決 1991年7月18日

原告

白浜栄一

右訴訟代理人弁護士

吉岡良治

財前昌和

被告

阿倍野労働基準監督署長中野一博

右指定代理人

阿部忠志

明石健次

宮本安正

塩原和男

若尾貞夫

宮林利正

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が原告に対し昭和五九年四月二六日付をもってなした労働者災害補償保険法(以下、労災保険法という)に基く障害等級第九級の補償給付の支給をする旨の処分を取消す。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1  労災事故の発生

原告は、株式会社三由基工の従業員として稼働中、昭和五四年一一月二三日、左踵骨骨折の傷害(以下、第一傷害という)を、続いて、同五五年三月一二日、右踵骨骨折の傷害(以下、第二傷害という)を受けた。

2  被告は原告に対し、同年四月一〇日、第一傷害による後遺障害について、労災保険法施行規則別表第一障害等級第一〇級一〇、同第一二級一二該(ママ)当するとし、同施行規則一四条三項により、同表障害等級第九級と認定し、その旨の障害補償給付決定を行い、同月二六日、第二傷害による後遺障害について、第一傷害による後遺障害の等級認定と同一の理由により、同表障害等級第九級と認定し、その旨の障害補償給付決定(以下、本件処分という)を行った。

3  原告は、本件処分につき、大阪労働者災害補償保険審査官に対し審査請求をしたが、同審査官は同六一年六月二七日棄却し、原告は労働保険審査会に対し再審査請求したが、同審査会は平成元年一二月二二日棄却し、同裁決書は同月二八日原告に送達された。

二  原告の主張(本件処分の不当性)

1  労災保険法施行規則の解釈、運用の誤り

原告は、第一傷害及び第二傷害の結果、両下肢踵骨骨折の傷害を受け、両下肢に等しく同表障害等級第五級六に匹敵する後遺障害を残しているから、同施行規則一四条四項により、第二傷害による後遺障害は同表障害等級第五級と認定されるべきである。

2  第二傷害による後遺症状の評価の誤り

第二傷害による後遺障害は右下肢に限っても同表障害等級第八級七、九、一〇のいずれか及び第一二級一二に該当するから、同第七級と認定されるべきである。

第三判断

一  争点1について

1  労災保険法施行規則別表第一は、身体を部位に分類し、各部位における身体障害を一種または数種の障害群に分類する(下肢は、左右一対をなす器官であるが、左右はそれぞれ別個の部位である)。

2  労災事故によって生じた複数の部位或いは複数の障害群にわたる身体障害は、同表において特に組合せ障害と規定するもの以外は、個別に等級認定するのが原則である(同規則一四条三項、四項)。

3  組合せ障害

(1) 同表は、系列を異にする別個の部位の障害であっても、特に組合せを規定し等級を定めているものについては、両者を一括し加重障害として上位の等級認定をする。

(3)(ママ) 右組合せ障害は、その部位についての最上位の障害で、代替機能を完全に喪失した場合の特別の取扱いであると解されることに照らすと、特に同表に組合せ規定されたもののみが加重障害とされるのであり、同表に規定されない障害について、組合せ障害に準じた障害等級を認定することは許されないというべきである(同施行規則第一四条四項の適用はない)。

(3)(ママ) 両下肢に関する組合せ障害は、同表第一級八、第四級七、第五級六、第七級一一であり、何れも両下肢の特定関節以上の亡失又は両下肢の用廃、両足指の全部の亡失、用廃である。

4  原告の第一障害及び第二傷害による後遺障害は同表の組合せ障害に該当しないことは明らかであり、同表障害等級第五級六に準じて等級認定することはできない。

二  争点2について

(証拠略)によれば、原告の第二傷害による後遺障害は、同表障害等級第一〇級一〇(一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの)、同第一二級一二(局部にがん固な神経症状を残すもの)に該当するものと認められ、原告主張の等級に該当すると認めるに足りる証拠はない。

三  よって、原告の請求は理由がない。

(裁判長裁判官 蒲原範明 裁判官 野々上友之 裁判官 長谷部幸弥)

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